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現地レポート

大会3日目レポート ~メインコートに立つために~ RSS

2015年3月30日 15時13分

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ジュニアオールスター2015を通じて、多くの経験を積んでもらいたい――これまでずっとそう記してきた。その思いに変わりはないが、一方で大事なことを忘れていた。バスケットボールはスポーツである以上、勝敗の結果が生まれる。そうであれば、誰だって「勝利」を求めるはずだ。そして実際に勝利を重ねた選手だけが最後の舞台、「東日本大震災復興支援 第28回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2015」であれば、決勝戦のためだけに作られた“メインコート”に立てるのだ。

宮城県・女子は初めて大会最終日まで残ることができた。準決勝の埼玉県戦も残り10秒までリードをしていて、メインコートがかすかに見えてきた。しかし最後の最後でひっくり返され、メインコートは夢を消えた。
それでもエントリーされた12名がすべて異なる学校というチームで、川田 容子コーチが「よくまとまってくれた」と認めるほどのチームワークがメインコート一歩手前まで導いたことに間違いはない。
「みんな元気のいい子たちなので、練習から元気の良さを出すことを心がけて指導してきました。12名が一度も欠けることなく練習に参加してくれたことが、まとまりにつながったのだと思います」
川田コーチの言葉に加えて、彼女たちは4年前の大会、つまり東日本大震災が起こったことで大会が中止され、コートに立てなかった選手の分まで頑張ろうと心を一つにしたこともまとまりの源になった。
「プログラムに載せるスローガンを『今年こそ見せましょう。宮城県の底力を‼』にしました。プロ野球・東北楽天イーグルスの嶋 基宏選手の言葉をもじったものですが、今大会では宮城県の底力を見せられたと思います」

試合終了後、次のチームのために椅子を並べ直す宮城県・女子⑥今野 紀花選手

試合終了後、次のチームのために椅子を並べ直す宮城県・女子⑥今野 紀花選手

試合終了後、悔し涙を流す選手たちの輪から1人だけ離れていたのが、大会の優秀選手にも選ばれたエースの#6 今野 紀花選手だった。一人で泣いていたのではない。彼女は次のゲームを行う愛知県・男子チームのために、ベンチの椅子をキレイに並べ直していたのだ。そんなところにも宮城県の底力を見つけることができた。

 

メインコートの悔しさをこれからのステップアップにつなげたい埼玉県・女子⑨中澤 梨南選手

メインコートの悔しさをこれからのステップアップにつなげたい埼玉県・女子⑨中澤 梨南選手

その宮城県を破ってメインコートに立った埼玉県・女子だったが、#15 奥山 理々嘉選手、#14 モハメド 早野夏選手を擁する神奈川県・女子に敗れて、9年ぶりの頂点に立つことはできなかった。チームで唯一の1年生であり、大会の優秀選手にも選ばれた#9 中澤 梨南選手が言う。
「初めてのジュニアオールスターで緊張したし、2年生の足を引っ張ってしまったけど、最後は楽しくプレイできました。悔しい思いもあるので、来年またここに戻ってきて、今度は優勝をしたいです」
スキルはまだまだだが、たまに見せるリバウンドは、小学生時代に走り高跳びで日本一になった跳躍力――それまで渡嘉敷 来夢選手(JX-ENEOSサンフラワーズ)が持っていた小学生女子の記録を塗り替えての優勝――を惜しげもなく披露していた。今後が楽しみな選手である。

 

インサイドだけでなくアウトサイドのプレイも披露した神奈川県・女子⑮奥山 理々嘉選手

インサイドだけでなくアウトサイドのプレイも披露した神奈川県・女子⑮奥山 理々嘉選手

楽しみな選手といえば、優勝した神奈川県・女子の奥山選手も将来が楽しみな選手の1人である。登録は180cmとのことだが、体の幅もあり、もっと大きく見える。それでいてインサイドだけではなく、速攻への参加や巧みなボールハンドリング、そして3Pシュートまで打つオールラウンドなプレイを見せてくれた。
「自分の役割はリバウンドと得点を取ること、そして走ること。個人的には満足のいくプレイができなかったけど、それらのことを最後まで意識しながらプレイできたことに意味があると思っています」
大人顔負けのコメントである。
将来は憧れでもある長岡 萌映子選手(富士通レッドウェーブ)のようなオールラウンドプレイヤーになりたいのだという。メインコートでプレイすることも「たくさんの人に見てもらえて、応援もされて嬉しかったし、楽しくプレイできました」と言っている。もっともっと上達をして、世界で活躍できる選手に進化してもらいたい。

「世界を目指す」という意味では少し身長が足りないかもしれない。大会初優勝を果たした岡山県のエース、#4 土屋 大輝選手だ。登録の身長は172cmで「もう止まり気味なんです」と認める。
しかし今大会の土屋選手はそのスコアリング能力以上にパスセンスや、そのパスを出すためのスペーシング能力で力を発揮していた。斉藤 一範コーチは言う。
「彼は熱くなると自分で得点を取りにいきたがるタイプ。そうなったときは1分でもベンチに下げると切り替えられる頭の良さも持っているんだけど、今大会はそういう場面がほとんどありませんでした。普段は異なる中学校のチームメイトたちを信用するようになって、パスを散らすことができるようになりました。それがジュニアオールスターを通じた彼の成長です」

スコアリング能力だけでなく、PGとしての才能も感じさせた岡山県・男子④土屋 大輝選手

スコアリング能力だけでなく、PGとしての才能も感じさせた岡山県・男子④土屋 大輝選手

土屋選手自身もそれを感じているようだ。
「上のレベルになればなるほどフェイスガードをされたり、自分への負担が大きくなる。そんなときに『周りを生かすようにしなさい。そのうちに得点を取らなければいけない時間がくるから』とコーチから言われて、今大会は我慢をすることができました。身長ももう止まり気味だし、将来的には周りを生かす選手になりたいと思っています」
土屋選手が得点能力とアシスト能力をバランスよく使い分けたことで、対戦相手はディフェンスの的を絞りづらかった。それがメインコートにたどり着き、さらには岡山県・男子を頂点に導いた要因の一つだと言える。そんな土屋選手に目標にする選手を聞くと、彼はNBLでもTK bjリーグでもなく、またNBAでもない選手の名前を挙げた。
「昨年度のジュニアオールスターで優勝した大阪府の大橋 大空選手です。キープ力もあるし、ディフェンスもいい。表情もいいし、気遣いもできる選手。昨年度の大阪府チームが岡山に合宿に来たときに知り合って、それからいろんなことを教わっています」
土屋選手が大橋選手に憧れたように、今度は土屋選手に憧れる年下の選手が出てくるかもしれない。そのようにしてメインコートに立つ選手の資質は受け継がれていくのかもしれない。

ジュニアオールスターは決して優劣を決めるだけの大会ではない。それでもメインコートに立つためには勝ち続けなければならない。矛盾をしているようだが、大切なのはメインコートに立つことではなく、立つために努力を続けることである。来年度のメインコートに立つのはどのチームか。めいっぱいの努力を重ねた選手をジュニアオールスターのメインコートは静かに待っている。

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大会2日目レポート ~よく学び、よく楽しむ!~ RSS

2015年3月29日 13時44分

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人はいつ、どこで、誰からでも学ぶことができる。「東日本大震災復興支援 第28回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会(ジュニアオールスター2015)」の2日目が終わり、改めてその結果や出場選手の顔ぶれ、表情を見たときにそのことを強く感じる。

執拗なマークを受けながらもチームを引っ張った三重県・男子④笹山 陸選手

執拗なマークを受けながらもチームを引っ張った三重県・男子④笹山 陸選手

三重県・男子のキャプテン、#4 笹山 陸選手のお兄さんは彼と同じ鈴鹿市立白子中学校から、京都・洛南高校に進み、筑波大学を経て、先日アーリーエントリー制度を利用して三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋でNBLデビューを果たした笹山 貴哉選手だ。兄の貴哉選手を見てバスケットを始めたわけではない、と陸選手は言う。貴哉選手が左利きであるのに対して、陸選手は右利き。そうした違いもある。しかし陸選手は兄・貴哉選手について、こう言っている。
「尊敬しています。同じポイントガードとして学べるところは学んでいるし、特に今日のようなタフなゲームでは兄のように強いメンタルが必要でした…」
埼玉県の執拗なマークに苦しみ、自分らしさが出せないままに終わったあとだけに、兄のような強気な姿勢でゴールに向かっていきたかったというわけだ。その悔いを兄にぶつけるのは悔しいかもしれない。弟とは、いつも兄から学びながら、一方でいつか兄を超えていきたいと思う存在だから。しかし悔いをぶつけることでヒントを得られるのであれば、兄ほど自分のことを理解し、アドバイスをしてくれる存在もいないだろう。
同じことは東京都B・女子の桂 蘭選手にも言える。決勝トーナメント1回戦で宮城県に敗れた悔しさをどう晴らしていけばいいのか。ぜひお姉さんに聞いてもらいたい。姉の葵さんはかつてジュニアオールスターで最優秀選手に選ばれたほどの実力者なのだから。

もう1人“学び”について話を聞いた選手が、意図せず同じ三重県・女子でセンターを務める#13 堀江 ゆうみ選手だった。彼女は兄弟から何かを学んだわけではない。しかし彼女は、今大会を通して何かを学んだと思えるほどに著しい成長を見せてくれた。所属する桑名市立光風中学校は三重県の3位に位置するチームだという。ジュニアオールスターではライバル校の四日市市立朝明中学校、鈴鹿市立神戸中学校のメンバーらとチームを作り上げてきた。

日に日に進歩する姿を見せてくれた三重県・女子⑬堀江 ゆうみ選手

日に日に進歩する姿を見せてくれた三重県・女子⑬堀江 ゆうみ選手

結果として決勝トーナメントの1回戦で姿を消すことになったが、それでも昨日の予選リーグ、今日の埼玉県・女子の3試合を通じて、初見の人でもわかるほどに変化を遂げていった。
「ジュニアオールスターに出場して、しかも決勝トーナメントに進むというめったにない経験をさせていただいてすごく感謝しているし、すごく光栄なことだと思っています。ジュニアオールスターでの3試合を通して、リバウンドの意識を高めなければいけないと学んだし、ボールを最後まで追いかけるとか、ポストプレイで周りを生かせることもできるのだと学びました。センターとしての役割を少し深めることができたように思います」
将来的には渡嘉敷 来夢選手(JX-ENEOSサンフラワーズ)や髙田 真希選手(デンソーアイリス)のように「ボールが渡ったら確実に得点が取れて、チームメイトから任せられるような選手になりたい」という。
今はまだ亀の歩みかもしれないが、ジュニアオールスター2015での経験を次の舞台――まずは来年度の「全国中学校バスケットボール大会(以下、全中)」出場を目指して、今回のチームメイトたちを上回りたいと彼女は考えている。

学びはしかし、ただ学んだままでいてはその意味が半減してしまう。次に生かすことで実力や自信へと昇華できるのだ。
愛知県・男子の波江野 寛之コーチは、愛知県チームを率いて今年でちょうど10年になる。その間一度もジュニアオールスターでベスト4の壁を破れていない。いや愛知県・男子そのものがその壁をいまだかつて破ったことがなかった。
だが今日、ついにその壁を突破した。その勝因の一つとして、波江野コーチは昨夏、自身が率いる岡崎市立北中学校で全中ベスト8にまで進んだ経験が生きたと認める。

県勢初の準決勝進出が決まった瞬間、ガッツポーズをする愛知県・男子の波江野 寛之コーチ

県勢初の準決勝進出が決まった瞬間、ガッツポーズをする愛知県・男子の波江野 寛之コーチ

「あの経験は今日の勝利にとって、ものすごく大きなものです。タイムアウトを取るタイミングや、ゲームの中で波が生まれるバスケットというスポーツで、波が落ち込んだときに選手たちにどのように声を掛けるべきかを考えるきっかけになりましたから」
ジュニアオールスターで9年間の負け続けたマイナスの蓄積と、全中の決勝トーナメントに進んだというプラスの経験。その2つが相まって、来年度以降のジュニアオールスターは後進に道を譲ることを宣言している波江野コーチの集大成として、愛知県・男子初のベスト4進出を導き出したのである。

明日はジュニアオールスター2015の最終日。まず準決勝があり、その後に決勝戦が行われる。選手もコーチも疲労が溜まっているだろうが、結果以上にゲームの中で何かに気づくことができれば、それはすなわち“学び”となる。選手、コーチ、そして彼ら、彼女らの一挙手一投足を見つめる同世代の選手や指導者たちにもゲームを楽しみつつ、一つでも多くのことをジュニアオールスター2015から学んでもらいたい。

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大会1日目レポート ~失って得るもの~ RSS

2015年3月28日 14時44分

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何かを得るためには、何かを失わなければならない――そんな格言が事実だとすれば、今日ほど多くのことを得た中学生はいないだろう。「東日本大震災復興支援 第28回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2015(ジュニアオールスター2015)」が開幕した。初日は東京体育館を中心に、近郊の6つの会場とあわせて7会場で予選リーグが行われ、明日からの決勝トーナメントに進出する男女各16チームが決定した。すなわちそれは出場チームのうち3分の2にあたる、男女各32チームが決勝トーナメント出場というチャンスを“失った”という意味でもある。

そのうちの一つ、男子の広島県は北海道と山形県に敗れた。初戦で北海道に敗れ、それでも2試合目の山形県に勝てば、まだチャンスはあったのだが、そのゲームも徐々に点差を離され、第3ピリオドを終えた段階で【36-54】。逆転の可能性がまったくないわけではなかったが、残り8分で18点差をひっくり返すのは容易でない。敗色濃厚のムードで最終ピリオドを迎える直前、広島県の稲垣 秀和コーチは島 豪志選手にこう声をかけた。

ゴールにアタックする姿勢を見せた広島男子⑭島 豪志選手

ゴールにアタックする姿勢を見せた広島男子⑭島 豪志選手

「ああいうプレイができるようになったことがお前の進歩じゃ!」
試合後、稲垣コーチはそのシーンについてこう明かしてくれた。
「中学生は体の当たりを嫌がる選手が多くて、彼(島選手)もそうでした。体の当たりを嫌がって、フェイダウェイシュートを打つことが多くて、このチームに選んでからは『体を当てて、シュートをねじ込む』ことをずっと要求してきたんです。あの直前にトラベリングにはなってしまったけど、体を当ててゴールに向かうプレイができるようになっていたので、そう声をかけました」
負けることが悔しいのは選手だけではない。コーチも同じである。しかし一方でコーチは、たとえゲームで負けたとしても、そのなかで選手の進歩、成長が見られることは望んでいる。島選手には稲垣コーチの言葉を忘れずに、これからもゴールに向かってほしい。

女子にも2連敗で予選リーグを終えたチームがいくつかある。香川県もその一つ。(メンバーは違うが)昨年度の優勝チームの福岡県と三重県に敗れて、彼女たちのジュニアオールスター2015は終わった。

相手の高さに苦しみながらも、体を張り続けた香川女子④植松 涼選手

相手の高さに苦しみながらも、体を張り続けた香川女子④植松 涼選手

福岡県のセンター(172センチ)と、三重県のセンター(176センチ)にマッチアップした香川県のキャプテン、植松 涼選手(165センチ)が言う。
「香川県はあんな大きな選手がいません。高校生でも小さいんです。だから福岡県のセンターも、三重県のセンターも、自分からすると見たことがないサイズの中学生でした。チームに帰ったら、全国にはそれほど大きな選手がいるんだよってみんなに伝えたいです」
自身の中学校ではキャプテンではないが、香川県ではキャプテンとしてもチームメイトに声をかけ続けていた。経験したことのない高さに苦しみながらも、それでもキャプテンとしての重責を全うした。この経験は必ず植松選手を選手としてだけではなく、人間としても大きく成長させるはずである。

その香川県に勝った福岡県と三重県による決勝トーナメント進出をかけたゲームは、三重県が勝利。試合終盤、福岡県のパワーフォワード首藤 祐希選手はベンチに下げられ、溢れる涙をこらえることができなかった。

自分のプレイができず涙を流す福岡女子⑭首藤 祐希選手

自分のプレイができず涙を流す福岡女子⑭首藤祐希選手

「自分のせいで負けました…自分がリバウンドに行かなくて負けたので、本当に悔しいです。自分のプレイがうまくできなくて、弱気になっていたんだと思います。夏までにはリバウンド、ディフェンス…オフェンスではいつでもシュートが決められるような選手になっていたいです」
ジュニアオールスターでは一つの中学校から最大で4人までしかチームに入ることができない。そのため、ややもすれば選抜チームへの帰属意識は薄れてしまいがちである。それでも負けて涙を流せるのは、首藤選手がもっとうまくなりたいと負けた瞬間に思えたからだろう。大人は「経験が大事」だと言うが、彼女たちはいつでも目の前の勝利に立ち向かっている。彼女の涙にそのことを改めて気づかされる。
首藤選手の力強い1対1は全国でもトップクラスだろう。それをより多くのゲームで披露するためにも、リバウンドへの意識をさらに高めて、チームを支えるオールラウンドプレーヤーへと成長してほしい。

「福岡県の生命線であるディフェンス、リバウンド、ルーズボールを三重県のほうが頑張っていました。三重県を称えるしかありません」
2連覇を断たれた福岡県・女子の山崎 修コーチはゲームをそう振り返る。振り返りつつ、夏の「全国中学校バスケットボール大会」に向けて、今度は指導する中学校を再び鍛え直すと誓っていた。中学バスケット界の名将もまた、ジュニアオールスター2015での負けをそのままにするつもりはない。
選手もコーチも失って得るものがあるのだ。

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