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現地レポート

大会1日目レポート ~失って得るもの~ RSS

2015年3月28日 14時44分

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何かを得るためには、何かを失わなければならない――そんな格言が事実だとすれば、今日ほど多くのことを得た中学生はいないだろう。「東日本大震災復興支援 第28回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2015(ジュニアオールスター2015)」が開幕した。初日は東京体育館を中心に、近郊の6つの会場とあわせて7会場で予選リーグが行われ、明日からの決勝トーナメントに進出する男女各16チームが決定した。すなわちそれは出場チームのうち3分の2にあたる、男女各32チームが決勝トーナメント出場というチャンスを“失った”という意味でもある。

そのうちの一つ、男子の広島県は北海道と山形県に敗れた。初戦で北海道に敗れ、それでも2試合目の山形県に勝てば、まだチャンスはあったのだが、そのゲームも徐々に点差を離され、第3ピリオドを終えた段階で【36-54】。逆転の可能性がまったくないわけではなかったが、残り8分で18点差をひっくり返すのは容易でない。敗色濃厚のムードで最終ピリオドを迎える直前、広島県の稲垣 秀和コーチは島 豪志選手にこう声をかけた。

ゴールにアタックする姿勢を見せた広島男子⑭島 豪志選手

ゴールにアタックする姿勢を見せた広島男子⑭島 豪志選手

「ああいうプレイができるようになったことがお前の進歩じゃ!」
試合後、稲垣コーチはそのシーンについてこう明かしてくれた。
「中学生は体の当たりを嫌がる選手が多くて、彼(島選手)もそうでした。体の当たりを嫌がって、フェイダウェイシュートを打つことが多くて、このチームに選んでからは『体を当てて、シュートをねじ込む』ことをずっと要求してきたんです。あの直前にトラベリングにはなってしまったけど、体を当ててゴールに向かうプレイができるようになっていたので、そう声をかけました」
負けることが悔しいのは選手だけではない。コーチも同じである。しかし一方でコーチは、たとえゲームで負けたとしても、そのなかで選手の進歩、成長が見られることは望んでいる。島選手には稲垣コーチの言葉を忘れずに、これからもゴールに向かってほしい。

女子にも2連敗で予選リーグを終えたチームがいくつかある。香川県もその一つ。(メンバーは違うが)昨年度の優勝チームの福岡県と三重県に敗れて、彼女たちのジュニアオールスター2015は終わった。

相手の高さに苦しみながらも、体を張り続けた香川女子④植松 涼選手

相手の高さに苦しみながらも、体を張り続けた香川女子④植松 涼選手

福岡県のセンター(172センチ)と、三重県のセンター(176センチ)にマッチアップした香川県のキャプテン、植松 涼選手(165センチ)が言う。
「香川県はあんな大きな選手がいません。高校生でも小さいんです。だから福岡県のセンターも、三重県のセンターも、自分からすると見たことがないサイズの中学生でした。チームに帰ったら、全国にはそれほど大きな選手がいるんだよってみんなに伝えたいです」
自身の中学校ではキャプテンではないが、香川県ではキャプテンとしてもチームメイトに声をかけ続けていた。経験したことのない高さに苦しみながらも、それでもキャプテンとしての重責を全うした。この経験は必ず植松選手を選手としてだけではなく、人間としても大きく成長させるはずである。

その香川県に勝った福岡県と三重県による決勝トーナメント進出をかけたゲームは、三重県が勝利。試合終盤、福岡県のパワーフォワード首藤 祐希選手はベンチに下げられ、溢れる涙をこらえることができなかった。

自分のプレイができず涙を流す福岡女子⑭首藤 祐希選手

自分のプレイができず涙を流す福岡女子⑭首藤祐希選手

「自分のせいで負けました…自分がリバウンドに行かなくて負けたので、本当に悔しいです。自分のプレイがうまくできなくて、弱気になっていたんだと思います。夏までにはリバウンド、ディフェンス…オフェンスではいつでもシュートが決められるような選手になっていたいです」
ジュニアオールスターでは一つの中学校から最大で4人までしかチームに入ることができない。そのため、ややもすれば選抜チームへの帰属意識は薄れてしまいがちである。それでも負けて涙を流せるのは、首藤選手がもっとうまくなりたいと負けた瞬間に思えたからだろう。大人は「経験が大事」だと言うが、彼女たちはいつでも目の前の勝利に立ち向かっている。彼女の涙にそのことを改めて気づかされる。
首藤選手の力強い1対1は全国でもトップクラスだろう。それをより多くのゲームで披露するためにも、リバウンドへの意識をさらに高めて、チームを支えるオールラウンドプレーヤーへと成長してほしい。

「福岡県の生命線であるディフェンス、リバウンド、ルーズボールを三重県のほうが頑張っていました。三重県を称えるしかありません」
2連覇を断たれた福岡県・女子の山崎 修コーチはゲームをそう振り返る。振り返りつつ、夏の「全国中学校バスケットボール大会」に向けて、今度は指導する中学校を再び鍛え直すと誓っていた。中学バスケット界の名将もまた、ジュニアオールスター2015での負けをそのままにするつもりはない。
選手もコーチも失って得るものがあるのだ。

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